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2007年06月27日

アメリカ編1-2

学校訪問と市民社会 

 アナポリス市長表敬訪問が最初のプログラムだった。通された部屋の中ほどに、ワシントン、ジェファーソン、フランクリンが独立宣言を起草した机が威容を誇っていた。人口35.000人。市議9人、そのうち女性が4人というのは頼もしい。

 いよいよ小学校訪問。私たちに与えられた時間は1人10分間。こちらは即席のチームだから打ち合わせ通りに運ぶわけがない。英語の達者な大学生とヘボ英語の被爆者との間に気まずさが漂う。

 子どもたちは被爆した佐々木サダコが、それに因る白血病で亡くなったと知っているが、その原爆をアメリカが投下したことについては、「リメンバー パールハーバー」と口を揃えて言う。親たちがそう言うのだろう。子どもたちの興味は千羽鶴。折り方を習いたいと言われれば従うしかない。あせっているうちに時間切れになってしまった。

 小学生を相手にして、歴史認識の論争もないものと、私たちは黙りこんだが悔しさで胸がつまりそうだった。この市民感情のミゾは、どこまでも合意点を見出せないだろう。

 夜は、何通りもの集会に参加した。そられは持ち寄りの夕食会から始まる。これはアメリカ社会では慣わしであることが、おいおい分かってきた。

 多彩な集会の中でも私が興味を持ったのは、ベトナム帰還兵の癒しのグループだった。あの戦争は何だったのかと悩むあまり、未だに社会復帰できない人が多いそうだ。多くの市民が病んでいる人に手を差し伸べていた。歌ったり、何気ない話をしたりして、決して一人ぼっちじゃないと内的変化を促すのだそうだ。「ヤア」と、気さくに声を掛けてきたのは私服姿の市長さんだった。

 そんな運動をしている人たちも居るのに、あれから何度もアメリカは戦争を繰返している。アナポリスは映画「愛と青春の旅立ち」で知られている海軍兵学校の存在によって繁栄している都市であり、兵学校に属している人たちは特別のエリートとして尊敬されている。所詮、兵士は人殺しのプロではないかと、疑念が湧く。


(支庁舎の前で:アナポリス市長と)