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2007年06月27日

アメリカ編1-3

スープキッチン

 ワシントンDCのブラザレン教会がホームレスのためのスープキッチンを開いている。その規模は聞きしに勝る施設で、まるで特大ホテルのキッチンのようである。世界各地から大勢のボランティアが集って来ているそうだ。肌の色もとりどりなのがいかにもアメリカらしい。運営は寄付によって賄われている。食品メーカーから現物の寄付が寄せられるし、社会復帰した人たちからも感謝の金品が寄せられるそうだ。

 私たちは1日だけのボランティアなので、単純作業をすることになった。献立はなかなか豪華で、デザートもコーヒーも付いているとは驚いた。私の担当はスープ類の配膳に決まった。

 12時を告げる教会の鐘が鳴り始めると同時にドドッと2階に駆け上がって来た人たちが我先にと行列をなした光景は、まさしく人の壁だった。

 大きなパン数個、山盛りのバターライス、茄子のシチューを盛った長方形のトレイが次から次へと私の胸元に突き出された。彼らの好みを訊ねてから、大きな丼にマカロニスープかトマトスープを注ぐ作業は並大抵ではなかった。内緒でお代わりを要求する人、恥ずかしそうに黙々と食べる人などは、とても直視できなかったのだが、慣れてくると私にも周囲を観察する余裕がでてきた。

 食べ終わってからも、スナック菓子やパンなどをポケットに忍ばせる人、給食をプラスティック容器に詰める人。そうしながら、私たちに愛想笑いをする人たちも居て、目のやり場に困った。

 ホームレスの男性たちの殆どが戦場の体験者で、しかも、有色の人が多いのを見れば、社会復帰が難しいという意味も見えてくるような気がする。女性たちは男性の暴力とか子育てに疲れた人だという。

 昨今、日本の各地にもホームレスの人たちが増え続けている。駅の周辺や川原や公園などに段ボールとか工事現場のようにシートを張った小屋風のものを見つけると、遠回りしてしまう私である。

 このスープキッチンの体験が、私にとって、何だったのか、答えが出る時が来るのだろうか。暗色の課題を胸に詰めたけれど、作業が終わると同時に空腹感が迫ってきた。昼食はホームレスの食べ残しを所望した。鍋の底から掬い取ったスープの味は絶品だった。

(スープキッチンの作業を終えて)