岡田 恵美子 Emiko Okada

原爆を作ったのも人間、落としたのも人間です

8. 平和な世界を築くために

帰国後、私は被爆証言をするために、戦争に至る歴史や、日本がアジアの国々で行った加害について勉強しました。被害の話をすると、どうしても「なぜ日本は戦争を始めたのか?」「なぜ敗戦色が濃い中で、戦争を継続したのか?」という過去の問題に向き合わざるをえなくなるのです。

戦争を始めるのは、いつも一握りの権力者です。そしてその犠牲になるのは、社会で一番弱い存在である子供たち、女性達です。

バーバラ・レイノルズさんは言われました。

「戦争は瞬時に始まります。けれども平和は瞬時には築けません。平和を築くためには、生きている人々が不断の対話の努力をしなければなりません。」と。そして、彼女は広島がその役割を担わなければならないと言われました。それを聞いて、私は生きている限り被爆証言を続けていこうと思いました。私が語らなければ、亡くなった姉の死は無駄になってしまいます。

原爆が投下されて、今年で75年目です。75年経った今でも地球上から核兵器がなくなることはありませんでした。科学技術が格段に進歩した今、もし核兵器が使われると、そのもたらす被害は広島・長崎の比ではありません。核兵器を廃絶すること、戦争をなくすこと、それは私たち被爆者の悲願です。そのために、地球上に住むすべての人々が、何国人かではなく、一人の地球人という自覚を持ち、平和を築くための努力をしなければなりません。

原爆を作ったのも人間、落としたのも人間です。そしてその原爆で命や魂を奪われたのも人間です。

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