河野 キヨ美 Kiyomi Kono

忘れられないし、決して忘れてはいけない

9. 伝えたいこと

広島・長崎では、何の罪もない無辜の市民が何十万人も一瞬にして命を奪われました。運良く生きのびられた人達も放射能障害によって次々と亡くなられました。直接被爆していなくても、家族や友人を探すために投下後入市した人達の多くも、その後亡くなられたり、原爆後遺症に苦しんだりしておられます。それはなぜでしょう?それは核兵器が通常兵器と違うからです。そのことを知ってもらいたいです。

先日ヨーロッパから来られた何人かの人にお話する機会がありました。彼らは資料館を見て気分が悪くなったと時間を切り上げて出てこられました。原爆のことは知っていても、どこか遠いところの昔の出来事だと思っていて、実際にどんなことが起こったのかに触れる機会がなかったのでしょう。資料館で実相に触れ、衝撃を受けられたのだと思います。

昨年(2022年)ロシアがウクライナに侵攻し戦争が始まりました。ロシアは核兵器の使用をちらつかせて脅しに使っています。今まで被爆者が、核兵器がもたらす惨禍を世界中で訴えてきたのに無駄だったのかと無力感を感じています。それでも私たちは黙っていてはいけないと思っています。核兵器の恐ろしさは、毅然として伝えていかなければいけないものなのです。

小さな声であっても、集まれば大きな声になります。けれども権力を持つ人が資料館を訪れ、被爆の実相に触れて、核兵器の恐ろしさを理解してくだされば、もっと力を発揮してもらえるのではないでしょうか?まもなく広島でG7サミット(2023年5月19日~21日)が開催されます。各国の首脳はぜひ資料館を訪れ、被爆者の話を聞いてください。今の核兵器は、広島・長崎に使われたものの何百倍もの威力があると聞いています。もし使われたら人類は滅びてしまうでしょう。私は、子供達の未来が奪われてしまうことが一番悲しいです。

2017年、国連総会で被爆者の悲願であった核兵器禁止条約が採択され、2020年には発効条件である批准国が50カ国に達し、この条約は2021年1月17日に発効しました。2023年1月9日の時点で92ヶ国が署名、68ヶ国が批准しています。(広島市HP参照)ところが唯一の被爆国である日本は、この条約に加盟することもなく、締結国会議にオブザーバーとして参加することも拒んでいます。私は日本が核兵器の廃絶に向けて一歩でも歩をすすめてほしいと願っています。

キヨ美近景 2023年

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