阿部 静子 Shizuko Abe

「原爆の生き証人」として生きて

9. トルーマン大統領との面会

原爆投下を決断したハリー・トルーマン大統領に関する書籍・資料などを所蔵する、ミズーリ州・インディペンデンスにあるトルーマン大統領博物館・図書館で、5月5日、私たち被爆者8人を含む一行は、元大統領に面会しました。彼は3日後に80歳の誕生日を迎えるそうで、赤ら顔の老人という印象を受けました。それまで彼は日本人と会おうともせず、まして被爆者との面談など周りの人々の予想もしなかったことだったと聞きました。原爆投下を命じた元大統領が、被爆者と面談をするというので、地元の新聞社を初め、全米のテレビ局、ラジオ局が集まりました。その影響は大きく、その後の集会には大勢の人々が詰めかけました。

他の方々の気持ちは分かりませんが、私はそれまでに出会ったアメリカ人から温かいもてなしを受け、すっかり憎しみの気持ちは消えていました。面会といっても、彼が演壇に立ち、団長の松本卓夫氏が英語でインタビューをするといった形式でした。バーバラさんもステージの上にいたと思います。私たちからの質問や意見を言える場ではありませんでした。

彼はスピーチの中で、

「みなさんが感心を持っていらっしゃること(原爆投下)、その目的は、双方で50万人の死者やさらに多くの負傷者を出さずに戦争を終結させることだったのです。それだけです。戦争をするとき、目的は勝つことにあります。それだけです。原爆投下は必要だったのです。」

と言われました。また、

「私はそれが再び起こってはならないと思います。」

と述べられましたが、「それ(it)」が原爆投下を指すものなのか、戦争を指すものなのか分かりませんでした。「申し訳なかった。」という言葉はありませんでしたが、彼の顔はすまなさそうに見えました。

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