阿部 静子 Shizuko Abe

「原爆の生き証人」として生きて

10. アメリカ人の優しさに触れて

アメリカではホームステイさせてくださったご家族のみなさんには、ほんとによくしていただき、私はこの地で人生観が変わったと言っても過言ではありません。日本ではあれほど差別され、蔑まれていましたのに、アメリカではほんとに優しい方々に温かく接していただきました。もちろんこの巡礼を受け入れ、話を聞きに来て下さり、ホームステイをさせてくださった方々なので、アメリカの中でも特別な人々かもしれません。でも私は、この巡礼の旅で生きていく勇気を貰いました。今まで下を向いて生きていましたが、これからは被爆者として堂々と体験を語っていくことが、自分に与えられた使命だと考えるようになりました。アメリカで受けた優しさは、生涯決して忘れません。そして自分も出会ったアメリカ人たちのように、周りの人、特に弱っている人に優しくすることを信条として、これまで努めてきました。

ホストファミリーと

またホームステイを受け入れてくださっていた人同士の連携もよくとれていました。ある家で、出されたグリーンアスパラが美味しいと言いますと、次の家でも、その次の家でもアスパラが出ました。また「コーヒーと牛乳、どっちがいいですか?」と聞かれ、たまたまその時は牛乳を飲みたいと思い、「牛乳をください。」と申しましたら、その後は飲み物といえば、牛乳が出てきました。お互いに連絡を取り合って、できるだけ私たちの好みに合せようとしてくださっていたのだなと思いました。

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