2012年01月27日

56 アメリカ編4-21

ウイラマントリー氏

05年5月2日から始まったNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議(5年毎の見直し)のさなか、国連ビルの内外は大勢の人が往来していた。
 4日の昼下がり、私たち世界平和ミッションの面々は国際司法裁判所(ICJ・国連の組織下に常設された機関)の元判事・ウイラマントリー氏に会うために国連ビル地下のレストランで待っていた。
 氏は、NPT再検討会議開催中こそ、全世界の良心に訴えて核廃絶を実現させなくてはならないと、飛び回って居られる。私たちに許された時間も秒刻みであると知らされていた。手際よく質問しようと待機している中国新聞の岡田記者は、タバコを一口吸っては消し、次のタバコに火をつけては緊張をほぐしていた。
 約束の時間が少し過ぎたとき、人垣を掻き分けながら小柄な氏が近づいて来られた。スリランカ人特有の浅黒い肌、彫りの深い顔立ちは、01年8月6日、広島の反核集会でお見かけして以来であるが、私は他の所要があったので氏の高説を運悪く聞き逃している。
 岡田記者が「1996年、原爆使用は不法だったと判決を下していただいたことに感謝します」と挨拶するや、矢継ぎ早に過去・現在・未来の核事情についての見解を求めた。 
 氏は、「核保有国が核兵器削減とか軍縮に意欲的でないのが問題です。核抑止などという論理は欺瞞であり、条約違反です。とくにアメリカの核兵器使用も辞さないという動きは危険です」と、脇に抱えておられた革カバンから掌サイズの冊子を出されて「これに、私の持論が書いてあります」と、1人1人に手渡して下さった。秘書さんに急かされて、一端は去りかけた氏は、急ぎ戻って来られるなり「この冊子を日本語に訳して広めて貰えないだろうか」と言われた。「はい、私が属しているヒロシマ・スピークス・アウトで翻訳します。完成したら日本語は勿論ですが、英語の原文も一緒にしてホームページで公開していいでしょうか」と、ずうずうしく訊ねた。「あぁ、いいよ」と、あっさりと承諾を得た。
 冊子「核の脅威が日々増大するのは何故か」の末尾に「我々の幸運がどれくらい続くのかは誰にも分からない。もし、すべての人類がこの兵器の廃絶のために共に行動を起こさなければ、この兵器は単独で全人類を壊滅してしまうこともありうるのだ」と、氏は述べて居られる。
 翻訳と入力に半年かかったが、私たちのホームページに掲載した。今、続々と各方面から反響が寄せられている。
 
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ウイラマントリー氏と

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