2010年05月05日

25 アメリカ編 2-1

9.11・グランドゼロ

 9・11事件の半年後、『核兵器廃絶をめざすヒロシマ市民の会(略称:HANWA)』はアメリカの良心を求めるツアーをした。殆どのメンバーが「9・11の遺族と被爆者とは連帯できるだろう」と言ったが、私は無理だろうと感じていた。しかし、歴史的事件の現場を見るのも良かろうと考えたので参加することにした。

 9・11事件の跡地はジャガイモの芽を繰り抜いたように掘り返されて建築現場のように作業員が働いていた。跡地を囲った金網には故人にまつわる品やメッセージが括りつけてあった。その周辺は悲嘆にくれる人や見物人たちで混雑を極めていた。

 グランドゼロに被爆者が来たというので、私たちは報道関係者からインタビューを受けた。彼らの質問は「1945年の原爆投下を思い出しますか?」と一様だった。「同じ様です」と応える仲間も居たが、私は頑として拒んだ。

 私たちは9・11の遺族のグループ「ピースフル・トゥマロウズ」に出会った。このグループは、アフガン攻撃を開始したブッシュ政権に「憎しみの連鎖を断つ」ことを進言すると同時に、戦地のアフガンに出向いて人道援助をしてきたと言う。アメリカの世論がアフガン攻撃を是認する中にあって、このグループが反戦を主張しているのは高く評価したいと思ったが、彼らの口から「ヒロシマ・ナガサキと同じような被害を受けた」といわれたので、私には違和感が深まった。

 夜、仏教寺院で対話集会が開かれた。9・11の遺族たちは故人の思い出を語り、寂しさを訴えた。日本側も被爆の悲惨さを訴えた。双方とも、命・悲惨・死・寂しさなどの共通項のもとに「非戦・平和」への道を辿ろうと競って発言した。

 私は「皆様の悲しみや怒りは私も共有していますが、あの事件が核兵器を使用したものでなかったことを喜びとしてください。好戦的なブッシュ体制に抗して、貴方たちが反戦を訴えるエネルギーを核廃絶へと繋げてください。核超大国であることを当然とするアメリカの現況を直視してください。現時点では、大量殺戮の手段は劣化ウラン弾が主流になっています。やがて、全世界が汚染されるでしょう。世界は限りなく破滅へと向かっているのです」と発言した。

 集会が終わった時、数人の青年が私に寄って来た。「アメリカが率先して実行に移すべきは核廃絶です。そうすれば、ヒロシマ・ナガサキと善良なアメリカ市民との連帯ができますよね」と言われた。やっと、私は共感の意思表示ができた。

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(ピースフル・トゥマロウズと交流)

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