2011年10月07日

40 アメリカ編4-5

アメリカのシンクタンク

 モントレー国際大学院のワシントン支部はポトマック河畔にあった。
 05年4月22日昼下がり、最上階の広間から見えるのは巨大なビル群と今を盛りに咲いている八重桜の並木である。周辺に詳しい人の説明によると、向かいはウオーターゲート事件のあったビルだそうだ。なるほど、ホワイトハウスから1キロも離れていないなと、歴史の検証をしている気分になった。
 ローレンス・シャイマン博士は、急ぎ足に広間に入って来られるや「私はIAEA(国際原子力機構・、エルパラダイ事務総長は2005年ノーベル平和賞受賞)の特別顧問を務めていました。日本との関りは深いですよ、平和をテーマに5度訪れました。私のことはアメリカのシンクタンクと考えて下さっていいです」と自己紹介された。フォード・カーター・クリントン各大統領在任中、核兵器、軍備の分野で政府の実務を担当した実績がそう言わしめるのであろう。
 中国新聞の岡田記者が「ブッシュ政権における核政策について教えてください」「アメリカが本当に削減をしているとは思えないのですが…」等々、立て続けに質問を発した。
「世界情勢の推移によって、核保有の状態が変化していった」と答えた博士は、NPT(核不拡散条約)再検討会議は核保有国が非核保有国に核兵器を使用しないことを宣言することであるから、この会議は重要だと考えていると言われた。一方、核保有国が核廃絶をしても北朝鮮のことは解決しないだろうし、インドとパキスタンに対しては融和の橋渡しをする必要があるだろう。イスラエルは近隣諸国とのバランスのために核保有を望むだろう。最も危惧していることは、核が漏れないようにしてテロ組織に核兵器製造をさせないことである。アメリカ市民は大統領が核兵器を使用するとは思っていない。外交上の力を持つためと理解している」と返答された。「1945年、2個しかなかった原爆を現実に使いましたね。現在、使える小型核兵器開発をしていると聞いていますが、その目的は何ですか」と、岡田記者の質問は続いた。博士は「中国の急成長も脅威であり、将来が不透明である。ブッシュ政権は核兵器を小型化して通常兵器として変身させる方向に向かっている。それは抑止を現実的にするためであり、使用目的ではない。アメリカは地域的カンファレンスをホストとして務めるべきと思っている」と、返答された。
 最後になって私に発言の機会が与えられた。現在の博士が政権に関与する立場でないのは分かっているが「アメリカ大統領も、側近のシンクタンクの人々も、アメリカが世界を制しているという前提であることが疑問です。しかし、そう自認しているなら、アメリカが率先して核廃絶の道を取るべきです」と、言わせて貰った。

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(ワシントンメモリアル)

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