2011年10月07日

41 アメリカ編4-06

核保有を憂う人たち
 アメリカ内部にも核兵器廃絶、核の諸問題、軍縮や反戦運動に取り組んでいる人たちが大勢いる。 
彼らは核保有国に属しているから、私たちよりも心を痛めているのが共通していた。
 05年4月22日、カルフォルニアに本部を持つ「核時代平和財団」のオフィスにカーラ・オング女史を訪ねた。この財団は、ワシントンDCに活動拠点を移したばかりで、私たちが最初の訪問客だそうである。
 オング女史は「残念ながら、ブッシュ政権はNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議には関心がないみたいです。外した核弾頭はテキサスに存在しています。アメリカの核予算は年間400億ドル(4兆2千億円)です。核兵器のリサーチのためとか、核弾頭のライフワークを長くするとか…要するに、新しい機能にするために遣われているのです。アメリカ市民を教育して、回り回って市民たちの生活が脅かされると自覚させ、これらの問題に目をむけさせなくては核軍縮は実現しないと思います。核を放棄すればアメリカが弱体化すると危惧する市民も多いので、私たちは、アメリカの軍は他国より強大だから充分に国防が成り立つと説得しています。不確認のテロリストに核で威嚇しても解決にはなりません」と、20代の若さからくる熱い語りだった。
 翌23日は、02年3月、アメリカ政府の機密文書「核態勢の見直し(NPR)」をホームページ上で公開したグローバル・セキュリティー代表のジョン・パイク氏のオフィスを訪ねた。NPRには、アメリカを危険視している相手に対して、アメリカが核兵器の使用を考えているという内容も含まれているそうである。中国新聞の岡田記者の「どんな経路で、機密文書を入手されましたか」との問いに、パイク氏は「FAXから出てきたのさ」と冗談のような口調で返答された。そして、言葉を継いで自身の見解を以下のように述べられた。
 62年10月、キューバのミサイル危機のとき、9歳の私はケンタッキーに住んでいました。そこで戦闘機が給油しているのを見て戦争を知りました。それを契機に原爆の効果について学習を始めたのです。
 戦争をしてきた長い歴史が新兵器を創り続けてきました。現時点のアメリカは核兵器をかなり削減していますが、どこに居るか分からないテロの消滅は不可能という事情もあります。
 日本は長い歴史のなかで多様な文化を培ってきたから、多くの国宝を持っていますが、アメリカは歴史が浅い。原爆製造には長い時間と経費をかけてきました。だから、アメリカにとっては国宝ですよと、乾燥した声で自嘲的に言われた。私は「歴史のある日本には多数の国宝がありますから、核兵器は不要です。アメリカも別のものを国宝になさればいいですね」と述べて、パイク氏のオフィスを辞した。帰途、タクシーの窓越しにアーリントン墓地、硫黄島占領記念碑を見た。冷たい雨が降りしきっていた。                         


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(カーラ・オング女史にヒロシマ資料を贈呈)

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