2011年10月07日

47 アメリカ編4-12

アメリカのカリスマ

 05年4月27日午前中、私はバージニア州ノーフォークのバージニア・ビーチで空白の時間を持て余していた。地図を見ればマッカーサー記念館がある。アメリカが彼をどのように評価しているか伺うチャンスと思うのだが、やたら広い道路は猛スピードで車が行き交っているので、向こう側に渡る気がしない。ふと、草むらの四つ葉のクローバーが目に留まった。2本目、3本目も、とうとう、8本の四葉のクローバーを摘んで手帳に挟んだ。
 午後3時、「クリスチャン連合(キリスト教原理主義)」の元総裁パット・ロバートソン氏を訪ねた。彼の所有しているビルは西欧の宮殿のような趣がある。アポイントを取ってあったのだが、彼が現れるには時間がかかった。豪華な執務室には歴代の大統領や要人と一緒に撮った写真が麗々しく飾ってあった。それらにはタカ派もハト派もいる。CBN(クリスチャン ブロードキャスティング・ネットワーク)でテレビ伝道師を務めている彼が、信者たちのカリスマとして絶大な影響力を持っていることを裏付けている。
 中国新聞の岡田記者が「アメリカの精神的指導者としての貴方のご意見を伺いたい」と挨拶したら「個人的には核が広がっているのを憂慮しています」と、優等生のような返答をされた。
 岡田記者が、「アメリカは小型核兵器の開発をやめられますか」と尋ねると、「止められないと思う。北朝鮮のように汚い政権などが危ないから、世界のためにアメリカの力が必要だ」。記者は、「それだからアメリカは核を必要としているのですか」と迫った。「アメリカは民主主義を拡げるようにやっている。核保有しているのは世界平和実現への抑止力としてであり、相手が攻撃に来なければ使用することはない。テロ集団が危険です。核保有は悪い奴を捕まえる救急策です。フセインは核を持ちたがり、石油を独占しようとしていた。アメリカは警告を発したのです」と、言い訳めいた返答をされた。
 さらに私たちに向けて「広島と長崎は不幸なことになりましたが、それは当時の日本の指導者のせいです」と、淡々と、しかも確信に満ちた物言いをされた。
 私は「ヒロシマは力より対話、相互理解しか解決の道はないと考えています。そして核兵器廃絶を望んでいます。イスラムとの和解も対話ではないのでしょうか」と訴えたが、笑顔がかえってきただけだった。
 退去してタクシーを待つ間、ビルを囲むように広がる庭園を眺めると、広島の平和公園にある「平和の灯」(世界中の核兵器が廃絶するまで燃え続ける)に似ている建造物があり、炎が上がっていた。「この灯、どんな意味があるのかな」とメンバーが声をあげた。岡田記者が「この世にイスラム教徒が居なくなるまで燃え続けるのさ」と、すかさずジョークを言ったが、笑い出す者は1人としていなかった。


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(パット ロバートソン氏)

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